心の声

過去

「間に合わない ! 」
初めて聞いた、心の声。
それは、自分でも分からない叫びのようなものだった。

コロナで緊急事態宣言。
前代未聞の自宅待機。
テレビからは繰り返し流れる、重傷者の酸素マスク姿。
病床使用率、医療崩壊、考えもしなかった事態に恐怖でいっぱいだった。
死ぬかもしれない。
3か月後、私はテレビに映るあの重症患者のように、横たわっているのかもしれない。
そう、思った瞬間、
「間に合わない。」強烈な焦りを感じた。
「死ぬまでに、一度でいいからあの曲を弾いてみたかったのに。たとえ弾けなくても、チャレンジさえしていない。死ぬ間際に、のたうち回るほどの苦しみを味わうことになる。」
その強烈な焦りに、慌てた。

それから、なりふり構わずピアノに向かった。
朝から夕方まで、8時間近く。
何年も弾いていない、体も手首も痛くてたまらない。
もどかしいくらいに、以前よりも弾けない。
けれども、間に合わない ! の焦りから、ただひたすら弾いた。

あれから、私は変わり始めた。



コメント

タイトルとURLをコピーしました